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該当企業に不利なイベント発生による株式社債の下落時に収益機会を求めるディストレストセキュリティーズファンドは、戦略に属する。
ヘッジファンドが市場の上げ下げにかかわりなく絶対リターンの獲得を目指す投資戦略であることは、これまでに何度も触れてきた。
では、なぜことが可能となるのかについて、代表的投資戦略であるロングショート(ノーバイアス)戦略でみてみたい。
運用におけるパフォーマンス分析においてアルファ値とベータ値がある。
まずベータ値とは市場全体、たとえば東証株価指数(TOP「X)に連動する部分を指しており、どの銘柄でもある程度の期間をとってみると、市場の動きと個別銘柄の値動きには同調性があることが多く、これがベータ値(市場感応度)である。
ちなみに、市場全体に完全連動することを目指すパッシブファンドではベータ値は1ということになるが、数十から数百銘柄を組み入れたファンドでもベータ値はだいたい0.9-1.1あたりになるのが一般的である。
柄独自の価値の部分を指しており、一般的に優良銘柄であるほどアルファ値は高いということになる。
ロングショート(ノーバイアス)戦略とは、市場全体の上げ下げに左右されない運用を目指し、アルファ値の高い優良株を買う(ロングポジション)と同時にアルファ値の低い株を売る(ショートポジション)ことでネットポジションをニュートラルとし、市場感応度であるベータ値をゼロに近づける一方、リターン獲得はアルファ部分に絞り込む運用である。
アルファ部分のみで、たとえば10%程度のリターンをねらうとすれば、市場の上げ下げに影響されるベータ値とはリンクしていないヘッジファンドは絶対リターンだということになる。
ところで、ように個別銘柄のアルファで勝負し、ベータ値がゼロに近いということは、相場の下落局面に強い半面、数十%を超える大幅な上昇局面にはついていけないことになる。
ロングショート(ノーバイアス)戦略では、割安と思われる株をロング(買持ち)すると同時に、割高と判断する株をショート(空売り)する。
記憶に新しいところでは、ある日本株のヘッジファンドマネージャーは、昨年ジャスコ(現イオン)を買ってマイカルを売ることで利益をあげたといわれており、これなどはマイカルの倒産というイベント(事件)の発生にかけたイベントドリブン型のロングショート戦略といえる。
ところで、伝統的な資産運用の世界におけるリスクの概念はリターンのぶれ(標準偏差)を指すが、当然ながらぶれには下ぶれだけでなく上ぶれも含まれる。
ながら、一般の世界ではリスクとは損失のことであり、プラスのリターンをリスクとはとらえない。
絶対リターンを追求するヘッジファンドのリスク把握には、一般の世界と同様に、マイナスリターンである損失のみをリスクと認識し、プラスリターンはO(ゼロ)に置き換えて計算するダウンサイドディピエーションという指標が用いられるケースがある。
ダウンサイドディピエーションによりヘッジファンドの相場下落時に強みをもつ絶対リターンという商品特性を確認したのが1-11である。
これをみればヘッジファンドがマイナスリターンとなるケースが少なく、相場下落時に強みをもっということがよくわかる。
ヘッジファンドは一般的にイメージされるうさんくさい投機的な商品ではなく、市場の下落局面に強く絶対リターンを獲得できることについて合理的裏付があり、「高金利に着目した社債には発行会社の破綻によるデフォルト(債務不履行)リスクが気にかかり、定期預金はベイオフ(金融機関破綻時の預金払戻保証額を元本1,000万円とその利息とする捕置)が、最も安全と思われる日本国債ですら金利上昇あるいは格下げリスクがある。
いわんや、リスク資産である国内株は下落リスクがもっと怖い」という現在の運用難時代に解決策を提示する運用商品であることがおわかりいただけたものと思う。
ここまで聞くと「そんなうまい話が世の中にあるのか、うまい話には落とし穴があるのではないか」と思われる読者が多いのではないだろうか。
事実、ヘッジファンド投資を行うにあたっては、落とし穴に陥らないために、これから指摘する留意点に注意を払う必要がある。
第一のポイントは、運用機関(ヘッジファンドマネージャー)の力量の違いによるパフォーマンスのバラツキが伝統的資産とは比較にならないくらい大きいということを理解することである。
理解を容易にするために、二つの例を使って説明したい。
過去3年間の実際の個別銘柄のリターンから算出したアルファとベータを利用して、ロングショート戦略のむずかしさを説明する。
基本的にはベータ値が同じ組合せでポジションを組むことが望ましいるのであるが、ここでは問題の単純化のために個別銘柄ベースで議論を進める)。
ここに取り上げた銘柄は、同業種で大型企業という点も似ており、ロングショート戦略のマネージャーが、これら二つの企業の株価が比較的似た動きをすると想定し、ロングショート戦略の組合せとして取り上げたとしても不思議ではない。
なったかを振り返ってみよう。
まず、HとTである。
あるマネージャーが、1999年2月の段階でHをロング、Tをショートとするポジションを組んだとしよう。
その後の彼の戦略はどのようになっただろうか。
99年2月から2002年2月までの3年間で、HとTのベータ値はほぼ同じであるから、ロングショートポジションのベータ値はほぼゼロとなり、市場感応度をほぼ完全に打ち消すことができたことになる。
さらに、アルファ値は目立がプラスであるのに対し、Tはマイナスであるから、アルファ格差もうまくとれたことになる。
銘柄独自のアルファ格差だけをとるというロングショート本来の戦略がうまくいったことになる。
一方、同じ組合せであるTとNのケースをみてみよう。
トヨタをロング、Nを同額ショートにしていたら、いったいどの結果となっただろうか。
まず、ベータ値であるが、期間、Tは市場平均とほぼ同じ動きをカルロスゴーン氏によるリパイバルプランでの再生過程にあったそうした個別企業の特殊事情を株式市場が評価した結果、市場全体の動きとは大きく異なった評価を受けたものと思われる。
こうした個別銘柄特有の動きが大きく影響するのもロングショート戦略の特色といえる。
二つの例をもう一度整理してみる。
目立とTの組合せは、ベータ値をゼロに近づけることができたとともにアルファ格差をうまくとることができたわけであるが、TとNの組合せは、ベータ値をゼロにできなかったために市場変動リスクを被り、アルファ格差も想定と逆になってしまったために、アルファ、ベータ双方の点でマイナスを被ったことになる。
ベータ値である市場感応度をゼロに近づけ、銘柄独自のアルファ格差をとるというロングショート戦略は、銘柄選択およびその組合せ次第でリターンの出方は大きく異なってくる。
ロングショート戦略では銘柄選択組合せが超過収益源泉のすべてであるマネージャーの能力によってリターンは大きく異なることになる。
以上、過去の実際の例を使って説明したが、いかにして将来の銘柄聞のアルファ値とベータ値を推定し、銘柄選択とそのロングショートの組合せによってベータを消去し、アルファのみを獲得できるポジションを構築するかが、投資手法のポイントであり、部分に運用機関の巧拙が表れる。
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